東京藝術大学のキャンパス(上野・取手・千住)に足を踏み入れた者が一様に口にするのは、「日常と非日常の境界線が完全に崩壊している」という現場の異質さです。学園祭である「藝祭」や卒業制作展の時期に限らず、構内には常軌を逸した熱気と奇抜な制作風景が広がっています。
SNSや学内関係者の証言を丹念に拾い上げると、藝大生がいかに規格外の日常を送っているかが鮮明になります。
「学食のうどんをすする隣の席で、現代音楽の不協和音の周期性について大真面目に怒鳴り合いの議論が交わされている」「美術学部のゴミ捨て場から拾ってきた廃材で巨大な立体物を組み上げ、それがそのまま高額で海外コレクターに買い取られていった」「声楽科の友人がカラオケに行くと、ポップスを歌っているはずなのに部屋のグラスが共鳴して震え出す」――こうした逸話は、誇張でも都市伝説でもなく、日常茶飯事として語られます。
ある大手レコード会社のA&R担当者は、藝大出身のアーティストと対峙した際の印象を次のように語っています。
「彼らは『売れるフォーマット』を提示されても決して鵜呑みにしません。『なぜこのコード進行でなければならないのか』『その音色にどんな歴史的必然性があるのか』を徹底的に言語化し、解体してきます。大衆受けを狙う前に、表現の本質に対する純度が圧倒的に高すぎるのです。その妥協のなさが、時として大衆を熱狂させる唯一無二のポップアートへと結実します」