術後合併症はなぜ起きる?発生時期と危険サイン・予防策を徹底解説

術後合併症はなぜ起きる?発生時期と危険サイン・予防策を徹底解説

術後合併症はなぜ起きる?発生時期と危険サイン・予防策を徹底解説とは一体何なのか? 背景や要点を整理してお届けします。

手術翌日、痛みに顔をしかめる患者に対して、看護師や理学療法士が「さあ、ベッドの端に腰掛けて、立ち上がってみましょう」と促す場面は、病棟で日常的に見られる光景である。ネット上の掲示板や知恵袋、患者の手記などでは、「まだ傷口が激痛なのに無理やり歩かされた」「鬼のように感じた」という切実な声が散見される。

しかし、なぜここまで早期離床が推奨される理由が強調されるのか。そこには呼吸生理学と循環動態に根ざした明確な医学的根拠が存在する。

手術中に人工呼吸器で陽圧換気を受け、麻酔薬と筋弛緩薬を投与された肺は、術直後に肺胞が潰れる「無気肺」を起こしやすい。ベッド上で仰臥位のまま安静を保っていると、横隔膜が内臓に押し上げられ、肺底部への酸素供給が極端に制限される。これが喀痰困難と相まって、細菌の温床を作り出すのである。術後肺炎の予防と看護において、身体を起こして深呼吸を促し、重力を利用して横隔膜を下げること以上に有効な処置は存在しない。

さらに、下肢の筋肉を動かすことは「第2の心臓」である筋ポンプ作用を作動させ、下肢静脈の鬱滞を一掃する。早期離床こそが、深部静脈血栓症とそれに伴う致死的な肺塞栓症を予防する最大の防壁なのである。

臨床の現場では現在、「痛みを我慢させて歩かせる」時代は完全に終わっている。硬膜外鎮痛や静脈内自己調節鎮痛法(IV-PCA)、超音波ガイド下末梢神経ブロックを駆使し、「動ける程度まで痛みをコントロールした上で離床する」マルチモーダル鎮痛がスタンダードである。痛みを訴えることは決してわがままではなく、安全な離床を完遂するための必須アセスメント項目なのである。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。