どうしても自力で鍵を解除せざるを得ない極限状態に直面した場合、取り付けてある鍵の構造を正しく把握していなければ事態は泥沼化します。自転車に採用されている主な鍵タイプと、巷で囁かれる自力解除の現実的な限界を検証します。
シティサイクル(ママチャリ)の後輪に標準装備されている馬蹄錠(リング錠)は、最もトラブル相談が多いタイプです。プレスキー仕様の古い馬蹄錠であれば、鍵穴周辺の金属プレートをプライヤー等で変形させ、内部のカンヌキ(ロックバー)を直接スライドさせて解除できる余地があります。しかし、防犯性の高いディンプルキーを採用した最新の馬蹄錠は、焼き入れ加工が施された厚いスチール板で覆われており、手作業の工具でこじ開けることは構造上不可能です。
次に、ダイソーなど100円ショップで調達した工具による切断についてです。結論として、100均で販売されている小型金切鋸やペンチで切断できるのは、最も細い簡易ワイヤーロック程度に限られます。防犯用ワイヤーロックの芯線には撚り合わされた高強度スチールワイヤーが使われており、100均の刃物では数ミリ傷がつくだけで刃こぼれを起こし、作業者の手を滑らせて大怪我を負う危険が極めて高くなります。
ワイヤーや太いチェーンを確実に切断するには、テコの原理を最大限に利用するボルトクリッパー(番線カッター)が不可欠です。しかし、全長450mm以上の本格的なボルトクリッパーはホームセンターで購入しても3,000円から6,000円以上します。工具の購入費用だけで専門業者への依頼費用を上回ってしまうという本末転倒な事態に陥るケースが後を絶ちません。
ダイヤル式自転車鍵に関しては、「ワイヤーを強く外側に引っ張りながらダイヤルを回すと、正解の番号でわずかに手応え(遊び)が変わる」という裏ワザが知られています。安価な3連ダイヤル程度であれば、触覚に集中して5〜10分程度で解錠できるケースも存在します。ただし、内部に空転トラップが組み込まれた近年の高品質ダイヤル錠では、テンションをかけても手応えが均一になるよう設計されており、自力解読はほぼ不可能です。4桁ダイヤルであれば0000から9999まで最大1万通りの総当たりを試す必要があり、物理的な限界を迎えます。