松と一口に言っても、庭園に植栽される主要3樹種(黒松、赤松、五葉松)では成長速度も性質も大きく異なります。同一の感覚でハサミを入れると、取り返しのつかない枯損を招くため、それぞれの特性に合致した手順の使い分けが必須です。
【黒松(クロマツ)】:別名「雄松(オマツ)」。針葉が硬く太く、萌芽力(芽を出す力)が非常に旺盛です。関西以西などの暖地では、6月下旬から7月上旬にかけて当年の新芽をハサミで根元から切り落とす「芽切り」を行い、秋までに小ぶりで揃った「二番芽」を意図的に吹かせる高等技術が標準的に用いられます。樹勢が強いため、大胆な透かし剪定にも耐えるタフさを持っています。
【赤松(アカマツ)】:別名「雌松(メマツ)」。赤みを帯びた幹肌と柔らかい針葉が特徴で、数寄屋風の庭や自然風庭園に好まれます。黒松に比べて樹勢が繊細であり、過度な強剪定を行うと枝枯れを起こしやすい特徴があります。二番芽を出させる芽切りは基本的に行わず、春の緑摘みで伸長を抑え、冬のもみあげで葉の量をやや多めに残す「優しい透かし」を徹底することが失敗しない理由です。
【五葉松(ゴヨウマツ)】:1節から5本の針葉が出る品種で、成長速度が非常に遅く、盆栽や坪庭の主木として重用されます。枝の伸長が極めて緩やかなため、大掛かりな透かし剪定を毎年行う必要はありません。作業は初夏の軽微な芽摘みと、初冬の枯れ葉取りが中心となります。一度強い剪定で骨格を崩すと再生に10年単位の歳月を要するため、少しずつ様子を見ながら間引く慎重さが求められます。