国際機関からの強い批判に晒されながらも、シンガポールをはじめとする国々が鞭打ち刑を廃止しない理由はどこにあるのでしょうか。その根底には、徹底した実用主義と厳格な法治主義の哲学が存在します。
最大の理由は、圧倒的な犯罪抑止力です。シンガポール建国の父である故リー・クアンユー元首相は、「刑務所に収監して税金で養うだけでは、真の抑止力にならない。身体への直接的な苦痛と恐怖こそが、法を犯そうとする衝動を根底から断ち切る」という確固たる信念を持っていました。街を汚す落書きや不法滞在に対してすら鞭打ちを科す姿勢が、世界屈指の清潔さと安全な社会秩序を創り出したという自負が国内に根付いています。
実際に、鞭打ち刑を科された犯罪の再犯率は極めて低い数値を示しています。受刑者にとって「あの激痛を二度と味わいたくない」という強烈な恐怖が行動のブレーキとなり、結果として凶悪犯罪や都市の荒廃を防ぐ強力な安全弁として機能し続けています。