同じ英語の台詞であっても、役者のアプローチや演出方針によってマーティとドクの人物像は驚くほど変化します。各バージョンの演技と台詞のニュアンスには、明確な演出意図が反映されています。
マーティの口癖である「Heavy!」の訳し方ひとつ取っても、バージョンごとの個性が際立ちます。
- テレビ朝日版(三ツ矢雄二):「ヘビィだ!」(リズミカルでキャッチーな響きを重視し、日本語の俗語として定着させた)
- 日本テレビ版(山寺宏一):「ヘヴィだぜ!」「信じられない!」(若者らしい砕けた言い回しで臨場感を演出)
- ソフト版(宮川一朗太):「ヘヴィだ」「重症ね(ロレインへの返し)」「冗談だろ」(前後の文脈に合わせた自然な翻訳)
ドクの人物造形における穂積隆信と青野武の対比も見事です。穂積ドクは、科学者としての狂気の中に親しみやすい「近所のおじさん」のような温かみととぼけたユーモアを漂わせます。一方の青野ドクは、知的で厳格な一面とパニック時の奇声のギャップが鮮烈で、重厚な威厳を感じさせます。
さらに、全バージョンを通してほぼ一貫してビフ・タネン役(およびその祖先・子孫役)を務め上げた玄田哲章の存在は外せません。横暴で粗野でありながらどこか憎めないビフのパーソナリティを完璧に具現化し、どのマーティと組み合わせても作品の根幹を揺るぎないものにしています。