近年、愛用しているクロスバイクをドロップハンドル化(いわゆる「ドロハン化」)して長距離ツーリング仕様に仕立て直すカスタムが人気を集めています。しかし、ここで立ちはだかるのが「STIレバー(ショートプル)」と「フレームのVブレーキ台座」の相性問題です。この課題をクリアするための代表的な2つのアプローチを解説します。
1. ミニVブレーキ(ショートアームVブレーキ)の導入
最もスマートで信頼性の高い解決策が、ミニVブレーキ(ショートアームVブレーキ)への換装です。通常100mm前後あるアーム長を80〜90mm程度に切り詰めた特殊なVブレーキで、テコ比を意図的に落とすことで「ロード用レバーの引きしろ(ショートプル)」に最適化されています。
テクトロ(TEKTRO)の「RX6」「926AL」や、高級削り出しパーツで知られるTRPの「CX8.4」「CX9」などが定番モデルとして広く使われています。アダプター等の余計な中間パーツを挟まないため、ハンドル周りの見た目がすっきりし、重量増も抑えられます。
ただし、ショートアーム化によってリムとブレーキシューのクリアランス(間隔)は通常のVブレーキよりもシビアになります。ショートアームVブレーキの調整においては、ホイールのわずかな振れ(1mm以下の歪み)を事前に振れ取り台で完璧に修正し、左右のスプリング調整ボルトでミリ単位のセンター出しを行う高度なセッティング技術が求められます。
2. トラベルエージェント(引きしろ変換プーリー)の使い方
愛車にすでに装着されているシマノ製などの高性能Vブレーキ本体をそのまま流用したい場合に重宝するのが、「トラベルエージェント(Travel Agent)」と呼ばれるケーブル比率変換アダプターです。
Vブレーキ上部のワイヤーリードパイプ(バナナ管)の代わりに小さな滑車(プーリー)を取り付け、大小2段構造になった溝にワイヤーを特定のルートで巻き通します。プーリーの内径と外径のギア比(約1:2)を利用してワイヤーの引き量を倍増させる仕組みです。これにより、STIレバーの短い引き幅でも、通常のロングアームVブレーキのアームを適正量までダイレクトに動作させることが可能になります。
導入時は、ワイヤーの通し順序を間違えないこと、そしてプーリー内部の泥や砂の噛み込みを定期的に清掃・注油することが長期にわたるスムーズな作動を保つ秘訣です。