日本国内の美術大学、絵画教室、イラストレーターの間でデファクトスタンダードとして君臨しているのが「ホルベイン透明水彩絵の具」です。画材市場におけるシェアは圧倒的であり、全108色に及ぶ精緻なラインナップと、1本あたり300円前後から手に入るコストパフォーマンスの高さが支持され続けています。
画壇の重鎮やSNS上で活躍する現代作家たちの声を調査すると、「シュミンケ(ホラダム)やセヌリエのような欧州最高峰ブランドに比べて粘性が程よく、日本の軟水に素直に溶け出す」「乾燥後の再溶解性が極めて均質」と高く評価されています。海外製高級絵の具特有の強烈な粒立ち(グラニュレーション)を意図的に抑え、コントロールしやすい平滑な塗膜が得られる点も、初級者から上級者まで幅広く受け入れられる理由です。
ただし、どれほど優れた絵の具を揃えても、塗る対象である「紙」を見誤れば作品は成立しません。水彩紙の選び方において絶対に妥協してはならない基準が「秤量(重さ)300g/m²以上のコットン配合紙」を選ぶことです。木材パルプ主体の安価な画用紙(100〜200g/m²程度)は、水を吸った瞬間に波打ち、表面のサイジング(にじみ止め加工)が弱いため色が内部に沈み込んで発色が死んでしまいます。最初の1冊には、パルプ紙ながら耐久性に優れる「ヴィフアール(中目)」か、プロ基準の吸水と滲みを実現するコットン高配合の「ウォーターフォード」または「アルシュ」を選ぶのが鉄則です。
また、水彩筆の種類と使い分けも描画クオリティを左右します。弾力と含水量に優れた「コリンスキーセーブル(高級イタチ毛)」が至高とされますが、初期導入としては価格が高騰しています。現場で支持されているのは、高品質な化学繊維を用いた「ナイロン混毛筆(ホルベイン・ブラックリセーブルや名村大成堂のノーブルなど)」です。まずは広い面を塗る「平筆(1インチ前後)」と、まとまりの良い「丸筆(6号・10号)」の計3本を用意すれば、あらゆるモチーフの8割以上に対応可能です。