小栗旬の大河ドラマ史を語る上で欠かせないのが、子役時代に出演した1996年の『秀吉』と、2009年の『天地人』における「石田三成の2度演じ分け」という奇跡的なキャスティングです。
当時13歳だった小栗旬は、竹中直人主演の『秀吉』で三成の幼少期である「佐吉」役を演じました。有名な「三献の茶」(秀吉の体調に合わせて温度と濃さを変えた茶を差し出すエピソード)において、澄んだ瞳と礼儀正しい所作で秀吉の心を掴む聡明な少年を見事に演じ切り、視聴者の記憶に鮮烈な印象を残しました。
そして13年後、妻夫木聡が主演を務めた『天地人』にて、壮年期の石田三成役として再びオファーを受けることになります。同一の大河ドラマシリーズにおいて、子役時代に演じた歴史上の同一人物を、大人になってから本役として再び演じるケースは極めて異例です。
当時のインタビューにおいて、小栗旬は「子役のときに演じた佐吉という役に、大人になってからもう一度命を吹き込める機会をもらえるとは思っていなかった。三成が抱えていた孤独や、融通が利かないほどの真っ直ぐな義の心を自分なりに表現したい」と語っていました。
また、2000年の『葵 徳川三代』では細川忠利役として出演。津川雅彦や西田敏行ら大ベテランが揃う圧倒的な重圧の撮影現場の中で、伝統的な時代劇の所作やセリフ回しの基礎を叩き込まれました。この若手時代の過酷な現場経験が、後の堂々たる主役像へと繋がる血肉となったことは間違いありません。