松本若菜の名を日本中に轟かせた決定的な契機が、2026年放送のフジテレビ系ドラマ『やんごとなき一族』です。土屋太鳳演じる庶民出身の主人公・佐都をいびり倒す名門一族の長男の嫁・深山美保子役を熱演。嫉妬や悪意をむき出しにした顔芸、童謡のメロディに乗せて嫌味を放つ独特の節回し、早口の罵詈雑言といったエキセントリックなパフォーマンスは、いつしか視聴者から「松本劇場」と呼ばれる社会現象へと発展しました。
この「松本劇場」が単なるコミカルな誇張にとどまらず、幅広い層から熱狂的に支持された理由には、彼女が持つ計算された演技理論があります。制作発表や公式インタビューで明かされたところによると、美保子というキャラクターの奇行は、名門の家柄を守るために自身の人生を犠牲にしてきた「報われない女の歪んだ悲哀」という確固たるバックボーンから逆算して構築されていました。ただ奇声を上げるのではなく、目の奥に滲む焦燥感や孤独を同時に表現したからこそ、視聴者は嫌悪感を抱くどころか「美保子に感情移入してしまう」「憎めない」と惹きつけられたのです。
同クールにはParavi独占配信およびテレビ東京系で放送された『復讐の未亡人』で連続ドラマ初主演を飾り、夫を自殺に追い込んだ同僚たちを妖艶かつ冷徹に破滅させていく未亡人・鈴木密役を好演。コメディカルな怪演とサスペンスフルな復讐劇という対極のトーンを同時期に完璧に見せつけたことで、松本若菜の演技力の評判は業界内外で不動のものとなりました。