須磨離宮公園を語る上で欠かせないのが、その成り立ちに刻まれた高貴な歴史です。この地には1914年(大正3年)、大正天皇の静養地として皇室別荘「武庫離宮」が造営されました。当時の宮内省内匠寮が総力を挙げて設計した庭園は、日本の近代庭園史においても最高峰の美しさを誇り、現在も正門や中門、石垣などの随所に往時の格調高い面影を残しています。
太平洋戦争時の戦災により多くの建造物は失われたものの、1967年(昭和42年)に上皇ご夫妻(当時の皇太子殿下・美智子妃殿下)のご成婚記念事業として神戸市へ下賜され、現在の都市公園として整備・開園されました。公園のシンボルである噴水広場から海を見下ろすキャナル(運河)構造の景観は、かつての宮廷庭園の壮大さを今に伝える象徴的なレイアウトです。
単なる憩いの場にとどまらず、100年を超える時を超えて受け継がれてきた近代建築美と瀬戸内の大自然が交差する空間設計こそが、訪れる人々に非日常的な静けさと深い充足感を与える最大の要因となっています。