鳥羽海上保安部の職務は、犯罪捜査や救難活動だけに留まりません。海上の「道しるべ」を保全する航路標識業務、とりわけ神島灯台管理は、日本の近代海上史と深く結びついた象徴的な任務です。
三島由紀夫の不朽の名作『潮騒』の舞台として知られる神島。その断崖絶壁にそびえる神島灯台は、伊良湖水道を航行する船舶にとって100年以上にわたり命綱となってきました。海上保安庁の航行援助エンジニア(交通部職員)たちは、急峻な山道を大型機材を背負って登り、過酷な塩風に晒されるレンズや灯火装置の定期点検を黙々とこなしています。暴風雨や地震によって光が途絶えれば大惨事を招くため、予備電源の保守や遠隔監視システムの運用には一分の隙も許されません。
こうした専門的で堅牢な任務の一方で、地域や市民との絆を深める取り組みとして高い熱狂を生んでいるのが、定期的に開催される巡視船一般公開イベントです。鳥羽マリンフェスタや「海の日」前後に鳥羽港で開かれる一般公開では、巡視船いすずの甲板や操舵室が開放され、親子連れや海洋ファンで長蛇の列ができます。
「普段は見られない高圧放水銃の実演や、潜水士(海猿)の降下訓練を間近で見て息を呑んだ」「隊員の方々が海の危険性を真剣に教えてくれた」といった参加者の声がSNS上でも溢れており、市民の海洋安全意識を高める重要な広報拠点として定着しています。