伊東ゆかりに対して「昭和の懐メロ歌手」という固定観念を抱くリスナーは少なくありません。しかし、これは音楽史的な観点から見れば大きな誤解です。
彼女は1965年にイタリアの「サンレモ音楽祭」へ出場し、入賞を果たすなど、当時としては異例の国際派シンガーでした。イタリア語での歌唱も完璧にこなし、現地のオーケストラをバックに堂々たるパフォーマンスを披露した実績を持っています。
また、昭和芸能界にありがちだった「親の過度な意向による操り人形」というステレオタイプとは異なり、彼女自身が幼少期から音楽を愛し、自身の意志で表現の幅を広げていきました。歌謡曲全盛期にあっても、常にジャズやボサノヴァ、ソウルミュージックへのリスペクトを持ち続け、自身のアルバムでは実験的なクロスオーバーサウンドに挑戦し続けた真のパイオニアです。