ハットトリックの英語表記は「hat-trick」。サッカー界で日常的に使われるこの用語ですが、ハットトリックの語源・由来を辿ると、1858年にイギリスで行われた伝統競技クリケットの発祥へと行き着きます。
当時、ハイド・パークで行われたシェフィールド・クリケット・クラブの試合において、名ボウラー(投手)であったハイド・ハーマン・スティーブンソン(H.H. Stephenson)選手が、3球連続で相手バッターをアウトにする「3連続ウィケット(Wicket)」という前人未到の神業を成し遂げました。
この大偉業に熱狂したクラブ関係者や観客たちが資金を出し合い、スティーブンソン選手に特注の高級な帽子をプレゼントした理由こそが、まさに「帽子を使った手品(トリック)」を想起させる言葉の始まりでした。当時の英国紳士にとってシルクハットなどの上質な帽子はステータスの象徴であり、帽子を贈る行為は最上級の賛辞を意味していたのです。
その後、1870年代後半から1880年代にかけて黎明期の近代フットボール(サッカー)報道にもこの表現が流用されるようになり、1試合で3ゴールを奪う傑出したストライカーへの代名詞として世界中へ定着していきました。
現代サッカーにおいても、ハットトリックを達成した選手が試合球(公式球)にチームメイト全員のサインをもらって記念ボールを持ち帰るという美しい伝統が受け継がれています。現場の取材陣によれば、この習慣はイングランド・プレミアリーグをはじめ世界各国のトップリーグで暗黙の文化として尊重されており、選手にとっては生涯の宝物となっています。