では、制御性T細胞は具体的にどのような手段で他の免疫細胞の活動を沈静化させているのでしょうか。その制御性T細胞の活性化メカニズムは、複数の抑制経路が幾重にも張り巡らされた極めて巧妙なシステムです。
第一に、物理的な接触による抑制です。Tregの表面には「CTLA-4」と呼ばれる強力な免疫チェックポイント分子が高密度に発現しています。これが樹状細胞などの抗原提示細胞にあるCD80/CD86分子を横取りして引き抜くことで、通常の攻撃型T細胞が活性化シグナルを受け取れないように遮断します。
第二に、免疫抑制性サイトカインの放出です。Tregは「IL-10」や「TGF-β」といった強力な沈静化物質を分泌し、周囲の炎症性細胞の攻撃スイッチを直接オフにします。さらに、周囲に存在するT細胞の増殖因子「IL-2」を、自身の高密度なCD25受容体を使って貪欲に吸い尽くすことで、周囲の攻撃型細胞を飢餓状態に追い込み、活動を沈静化させる代謝的干渉も行います。
この多角的な働きによって、花粉や食物などの無害な抗原に対する過敏反応であるアレルギーの抑制や、自らの組織を標的にしてしまう自己免疫疾患の発症阻止が24時間体制で維持されているのです。