日本国内における羊肉の受容プロセスを振り返ると、3つの大きな波が存在します。2000年代前半に巻き起こった第1次ジンギスカンブームでは、全国に簡易的なジンギスカン鍋を置く店が乱立したものの、当時は冷凍輸入肉の解凍技術や温度管理が未成熟で、質のバラつきからブームは急速に沈静化しました。その後、2010年代半ばからの第2次ブームでは、オーストラリア産を中心とした鮮度の高いチルド(冷蔵)ラムチョップや生ラム肉が浸透し、「羊肉は臭くない」という再評価が進みます。
そして現在進行形である第3の波こそが、マトンを主役とする部位別焼肉カルチャーの確立です。貿易統計および食肉流通関係者の証言によると、豪州やニュージーランドにおける集出荷時の急速チルドパッキングと、日本国内における真空熟成管理(ドライエイジング・ウェットエイジング)が劇的に高度化。これにより、かつて劣化の原因となっていた「脂肪の酸化」を極限まで抑え込むことに成功しました。
東京都内の繁華街では、従来のジンギスカン鍋スタイルだけでなく、無煙ロースターや炭火七輪を用いて牛焼肉同様に部位ごとに切り分けて提供する専門店が急増しています。成羊ならではの芳醇なアロマと濃厚な赤身のテクスチャーは、霜降り牛の重たい脂に疲れた30代〜50代のグルメ層や、徹底してタンパク質の質にこだわるウェルネス層の胃袋を確実に掴んでいます。