神道における八百万の神の根底にあるのは、原始的な自然崇拝(アニミズム)です。古代の人々は、太陽や月、山や川、海、風、雷といった大自然の猛威と恵みの中に神霊(カミ)を見出しました。さらには巨木、巨石、井戸、かまど、道具(付喪神=つくもがみ)に至るまで、人間を取り巻くあらゆる存在に魂が宿ると信じたのです。
712年に編纂された日本神話の原典『古事記』を開くと、天地開闢(てんちかいびゃく)の瞬間に現れた「別天神(ことあまつかみ)」から始まり、国土を産み出したイザナギ・イザナミ、そして高天原(たかまがはら)を統べる天照大御神(アマテラスオオミカミ)へと連なる壮大な系譜が描かれています。八百万の神の由来は、こうした天津神(あまつかみ・天上の神)と国津神(くにつかみ・地上の神)が複雑に交わる多神教のネットワークにあります。
ここで重要なのが、八百万の神の数え方です。神道では神様を「1人、2人」ではなく「1柱、2柱(はしら)」と数えます。これには明確な文化的理由があります。古代の神道儀礼において、神霊は天から地上へ降り立つ際、依り代(よりしろ)となる「大木」や「御柱(みはしら)」に宿ると考えられていました。神霊の宿る依代が「柱」であったことから、神そのものを「柱」と数える慣習が定着したとされています。