「お客様のカウンセリングを担当すると、開口一番『私、剛毛で太くて広がりやすいんです』と訴える方の多くが、マイクロスコープで見ると極めて細い軟毛だったという事態が日常茶飯事になっています」――都内トップサロンの代表を務める毛髪診断士は、取材に対してこう打ち明けた。本来は柔らかい猫っ毛であるにもかかわらず、日々のヘアアイロンの過剰な熱や紫外線、度重なるハイトーンカラーによって毛髪内部のタンパク質が凝集し、表面が硬化して手触りがゴワついているだけというパターンだ。
多くの人が自らの髪質を見誤る最大の背景には、髪質が変わる決定的な理由を「生まれつきの遺伝」だけで片付けようとする固定観念がある。毛髪の性質を左右する要素は、毛根の形状といった先天的要因だけでなく、加齢による頭皮毛穴の楕円化、女性ホルモンの分泌低下、日々の生活習慣が複雑に絡み合う。加齢によって髪内部の脂質成分(CMC)や水分量が減少すると、一本一本は細く弱くなっているにもかかわらず、うねりとパサつきのせいで「ボリュームが出て爆発している」と錯覚してしまうのだ。
さらに見過ごせないのが、くせ毛の種類と原因に関する無理解だ。日本人に最も多い波状にうねる「波状毛」、一本の毛が捻れている「捻転毛」、数珠状に太さが不揃いな「連珠毛」、細かく縮れた「縮毛」という先天的なくせ毛に加え、毛穴の詰まりや血行不良、タンパク質結合の不均一化による「後天的くせ毛」が存在する。これをすべて「髪が傷んでいるから」と解釈してリッチな補修マスクを塗り重ねれば、毛髪内部が水分過多になり、かえってうねりが増幅するという悪循環に陥る。