突如としてエアコンが反応しなくなった際、機器の寿命や基板破損を疑う前に、電気信号の送受信プロセスにおける断絶を疑う必要があります。多くの現場調査で判明しているエアコンのリモコンが効かない理由は、大きく分けて「送信系統の出力不足」「本体制御マイコンのハングアップ(フリーズ)」「受光部の物理的遮蔽」の3点に集約されます。
なかでもユーザーを最も混乱させるのが、液晶はつくのにエアコンが動かない原因です。「画面に冷房26度と明瞭に表示されているのだから、電池切れであるはずがない」という思い込みが、問題の早期解決を阻む最大の障壁となります。液晶ディスプレイのセグメントを点灯・維持するために必要な電力はごく僅かですが、室内機の受光部へ向けて赤外線LEDを強くパルス発光させるには、その数十倍に及ぶ瞬間的な駆動電圧を要します。
乾電池の残量が一定水準を下回ると、表示機能は維持されつつも赤外線の照射出力だけが極端に低下し、室内機まで信号が到達しなくなります。また、電池ボックス内部の電極端子に生じた薄い酸化皮膜や、微細な液漏れの結晶が接触抵抗を生み、見かけ上の導通がありながら十分な電流が流れていないケースも現場で頻繁に確認されています。