祝い鯛を成功させる作業の8割は、オーブンに入れる前の下処理で決まります。日本料理の基本に忠実なステップを踏むだけで、仕上がりのクオリティは専門店のそれに劇的に近づきます。
ステップ1:ウロコと血合いの完全洗浄
購入時に下処理(内臓・ウロコ取り)を依頼している場合でも、エラ蓋の裏や尾の付け根にはウロコが残りやすいものです。包丁の先やウロコ取りで入念に取り除き、腹腔内を流水で洗いながら、中骨に沿って残っている赤黒い血合いを歯ブラシなどで徹底的にかき出します。その後、清潔なキッチンペーパーで内外の水分を完全に拭き取ります。
ステップ2:振り塩による浸透圧脱水
鯛の全体(表面および腹の中)に、魚の重量の約1.5〜2%程度の塩を満遍なく振ります。塩を振ってすぐに焼くのは厳禁です。常温で20分〜30分間静置すると、浸透圧の作用によって魚体から余分な水分が滲み出てきます。このドリップ(水分)こそが生臭みの元凶であるトリメチルアミンを大量に含んでいるため、キッチンペーパーで押さえるようにしっかりと拭き取ります。より完璧を期す場合は、皮全体に80〜90℃の熱湯を回しかけて氷水に落とす「霜降り」を行い、残ったぬめりを指の腹でこすり落とすと、魚特有の臭みは完全に消失します。
ステップ3:化粧塩(飾り塩)とアルミホイルによる焦げ防止
水分を拭き取った後、全体に薄く本塩を振ります。続いて行うのが、ヒレを保護しつつ白く美しく見せる「化粧塩(飾り塩)」です。 尾びれ、背びれ、胸びれ、尻びれを指で扇状に広げ、指先を水で濡らしてから粗塩(天然塩)をヒレの両面にたっぷりと擦り込むように分厚くまぶします。塩がヒレの水分を守る防壁の役割を果たします。さらに万全を期すため、尾びれと胸びれをすっぽりと包み込むようにアルミホイルを被せて保護します。このアルミホイルは、焼き上がりの残り5分〜7分前になった段階で取り外すことで、ヒレに適度な焼き色と美しい純白の塩のコントラストを与えることができます。
ステップ4:躍動感を生む「姿作り」の工夫
鯛がまるで大海原を跳ねているかのような曲線を演出したい場合は、竹串を腹側から尾に向けて波打つように2本打つ「踊り串」を施すか、天板に置く際に丸めたアルミホイルを腹の下に差し込んで背中を弓なりに反らせる工夫が有効です。これにより、平面的にならず立体感のある堂々たる姿焼きに焼き上がります。