神の子池を覗き込むと、水底に幾重にも重なり合う倒木が目に入ります。木々はまるで昨日沈んだかのように生々しい樹皮の質感を保っていますが、実際には数十年から半世紀以上前に倒れた木々です。
この倒木が腐らない最大の理由は、年間を通じて「水温約8度」に保たれた冷水環境にあります。木材を腐食させる木材腐朽菌やバクテリアは、通常15度〜30度前後の環境で活発に活動します。しかし、神の子池の極冷環境下では微生物の繁殖速度が極限まで低下し、木材の有機分解がほとんど進行しません。さらに、伏流水に含まれる微小な鉱物成分が木材の組織に徐々に沈着し、化石化に近い保存状態が保たれています。
この静止した時間のような水面を優雅に泳ぐのが、北海道の冷水域にのみ生息するイワナの一種「オショロコマ」です。氷河期の生き残りとも称されるこの魚が、エメラルドグリーンの光の中を滑るように泳ぐ姿は、訪れた観光客の目を強く引きつけます。