なぜ裕福だった家庭が跡形もなく崩壊したのか。その核心には、1990年代から2000年代前半にかけて母親が教団へ注ぎ込んだ莫大な献金があります。父親の急死(自死)によって精神的空白を抱えていた母親は、1991年頃に教団と接点を持ち、瞬く間に教義にのめり込んでいきました。
父親が遺した多額の生命保険金、祖父が経営していた建設会社の役員報酬、さらには先祖代々受け継いできた奈良市内の宅地や自宅の売却代金に至るまで、手元にあった資産はことごとく教団への献金へと姿を変えました。その総額は約1億円に達します。結果として2002年、母親は自己破産を宣告される事態に陥りました。
上記の数値が物語る通り、家財を投げ打ってまで教団に資金を供給し続けた結果、子どもたちに残されたのは食費にも事欠く困窮生活でした。進学校に通い優秀だった山上被告は大学への進学を断念せざるを得ず、海上自衛隊へ入隊。小児がんを患い右目を失明していた兄は、将来への絶望と貧困から2015年に自ら命を絶ちました。母の献金狂乱が招いた家族の犠牲は、金銭の多寡にとどまらない壊滅的な傷跡を残したのです。