ネット上の情報検索において、視覚の異変と自律神経の乱れを結びつける解説が多く見られます。「視界の端に黒い影が見えるのはストレスが原因」という言説もその一つです。
確かに、強度のストレスや過労、睡眠不足が続くと、自律神経の交感神経が過剰に緊張し、眼球周辺の毛細血管が収縮して一過性の虚血やピント調節障害を起こすことはあります。また、視界の中心にギザギザした万華鏡のような光が現れて徐々に広がり、その部分が見えなくなる閃輝暗点(せんきあんてん)は、脳の視覚野の血管収縮と拡張によって引き起こされ、片頭痛の前兆として20〜30代の若年層にも頻発します。
しかし、「ストレスや頭痛のせい」と決めつけてしまうことには重大な盲点があります。頭痛を伴わない閃輝暗点(光だけで終わる症状)が中高年以降に初めて現れた場合、それは偏頭痛ではなく脳動脈硬化や微小脳梗塞のサインである可能性が跳ね上がります。また、心因性の視覚異常と診断されるのは、眼底検査、視野検査、画像診断等ですべての器質的疾患(目や脳自体の物理的な損傷)が完全に除外された後に限定されます。「ストレスのせいにして眼科検査をスキップする」ことは、極めて危険な誤謬です。