防波堤や磯場で手軽に見つかるため、ファミリー層の磯遊びや釣り人が現地で採取しようとする光景が見られますが、ここには「命に関わる事故」と「刑事罰に直結する法令違反」という2大リスクが存在します。
第一に、物理的な採取環境の危険性です。亀の手が好んで生息するのは、外洋の強い波が絶え間なく打ち寄せる「潮間帯(ちょうかんたい)」の岩礁です。濡れた岩場は海藻や海苔が付着して極めて滑りやすく、夢中になって足元を踏み外す転落事故が多発しています。また、周期的に襲い来る「一発大波(三角波)」によって海中へ引きずり込まれる水難事故も後を絶ちません。亀の手の殻の縁はナイフのように鋭利であり、素手や薄手の軍手で引き剥がそうとすれば指先を深く切創する怪我を負います。
第二に、見落としてはならないのが漁業法違反(密漁)の法的リスクです。日本全国の多くの沿岸部(神奈川県、静岡県、三重県、和歌山県、四国・九州地方など)では、地元漁協に対して「第1種共同漁業権」が設定されており、アワビやサザエ、ウニと並んでカメノテが権利対象魚種に指定されている区域が数多く存在します。
水産庁による漁業法改正以降、密漁に対する罰則は大幅に強化されており、漁業権が設定された区域で無許可で採取した場合、漁業権侵害として100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、指定の特定水産動植物に該当しない場合でも、地元自治体の漁業調整規則により、バールやタガネといった道具の使用自体が規制されている海域がほとんどです。「磯遊びのついでに少し獲っただけ」という言い訳は法的に一切通用しません。