まず押さえておきたいのが、失笑の読み方は「しっしょう」であり、失笑の意味は「笑いをこらえきれずに、思わず吹き出してしまうこと」という点です。決して「笑いを失う(白ける、呆れ果てる)」という意味ではありません。
では、なぜこれほどまでに正反対の解釈が広まってしまったのでしょうか。その最大の要因は、漢字「失」の捉え方にあります。
日本語における「失」という文字には、単に「失う・無くす(喪失・失点)」という意味だけでなく、「自制がきかずに外へ漏れ出てしまう・手元から放たれる」という強い意味合いが含まれています。身近な例を挙げると分かりやすいでしょう。
- 失言(しつげん):言ってはならない言葉を、うっかり口から漏らしてしまうこと
- 失火(しっか):過失によって、意図せず火を出してしまうこと
- 失神(しっしん):意識のコントロールを失い、気を失ってしまうこと
- 失禁(しっきん):我慢できずに排泄物が外へ漏れ出てしまうこと
これらと同様に、「失笑」の「失」も「笑う感情のコントロールを失い、思わず笑いが吹き出して外に漏れる」という現象を指しています。「笑いが失せる」という意味ではなく、「笑いを我慢できなかった」というのが語源に即した正確な成り立ちです。