都内のシネマコンプレックス(TOHOシネマズ新宿、グランドシネマサンシャイン池袋等)での現場取材と、主要SNSにおける投稿データを分析すると、現代の映画ファンが作品を選ぶ際のリアルな判断軸が浮き彫りになります。
劇場ロビーで鑑賞直後の観客に話を聞くと、「配信を待たずに映画館へ来た理由」として最も多く挙げられたのが「音の振動と視界いっぱいの大画面でしか受け取れない情報量」でした。『アビス・クロニクル』を3回鑑賞したという20代会社員男性は次のように語ります。
「スマホや自宅のテレビでは、深海の環境音や微細な光のグラデーションの8割が失われてしまう。劇場で重低音を身体に浴びて初めて、自分が主人公たちと一緒に深海へ潜っているような錯覚に陥る。この体験に2,000円を払う価値は十分すぎるほどある」
また、ネット上の映画レビュー掲示板(Filmarksや映画.comなど)を定点観測すると、高評価レビューに共通しているのは「鑑賞後に誰かと語り合いたくなる余白」の存在です。単に物語が完結するだけでなく、劇中に散りばめられたモチーフの真意や登場人物の心理的背景について、ネット上で考察を交わす行為そのものがエンターテインメントの一部として定着しています。