テレビドラマ『傷だらけの天使』が放映開始されたのは1974年10月。東宝と渡辺企画の共同製作のもと、全26話にわたって深夜帯に近い土曜22時枠で放送されました。当時のテレビ界はホームドラマや勧善懲悪の刑事ドラマが全盛を誇っていましたが、本作はその潮流を真っ向から破壊するエネルギーに満ちていました。
物語のあらすじは、東京・代々木の古びたビル屋上にあるペントハウスに暮らすチンピラ探偵・木暮修(萩原健一)と、彼を「兄貴」と慕って盲従する弟分・滝和久(通称アキラ/水谷豊)の日常を描いたもの。二人は大手調査機関「綾部情報社」の社長・綾部貴子(岸田今日子)とその腹心・辰巳五郎(岸田森)から、警察には頼めない汚れ仕事や危険な調査を請け負い、わずかな日銭を稼ぎながら底辺を這い回ります。
本作がカルト的な支持を集め、伝説となった背景には「徹底したリアリズムと敗者の美学」があります。修とアキラは決して有能な名探偵ではなく、お人好しで騙されやすく、事件を解決しても大金を得るどころか手痛い裏切りに遭い、傷を深めていきます。高度経済成長期の繁栄から取り残された若者の孤独や苛立ちを、映画界のトップランナーであった監督陣(深作欣二、神代辰巳、恩地日出夫ら)が圧倒的なフィルムの質感で切り取りました。