関根元の生い立ちを振り返ると、幼少期から特異なパーソナリティが形成されていた形跡が見受けられます。埼玉県秩父市で生まれた関根は、父親を早くに亡くし、母親の手によって育てられました。戦後の混乱期の中で育った関根は、少年期から盗みや暴力などの非行を繰り返し、少年院送致を経験しています。
成人後の関根は、詐欺や恐喝、暴力行為などで前科前歴を重ねる一方、「犬を扱う才能」に関しては天性の素質を持っていました。動物の心理を把握する鋭い観察眼と卓越した調教技術を持ち、顧客の前では非常に礼儀正しく、専門知識を淀みなく語る魅力的なブリーダーとして振る舞うことができたのです。
関根の最大の武器は、相手の警戒心を瞬時に解く「天賦の話術」でした。「自分は政財界の重鎮と太いパイプがある」「裏社会の大幹部がバックにいる」といった荒唐無稽な大ホラを、微塵の迷いもなく真実であるかのように吹き込み、周囲の人間を信用させました。この息を吐くように嘘をつく虚言癖と、他者の苦痛に一切共感しないサイコパス的特質こそが、後に4人の人命を奪う凶行の土台となったのです。
私生活における家族関係も極めて歪でした。関根は生涯で複数回の結婚と離婚を繰り返しており、1983年に当時26歳だった風間博子と再婚しました。関根41歳、風間26歳という15歳の年の差夫婦は、犬のブリーディング事業を拡大させながら表向きは仲睦まじい夫婦を演じていましたが、莫大な負債から資産を守るために後に偽装離婚。しかし実質的なパートナー関係は続き、やがて共犯者として地獄への道を歩むことになります。