「チーズを食べると悪夢を見る」という言説を一躍有名にしたのが、2005年に英国チーズ委員会(British Cheese Board)が実施した前代未聞の臨床検証です。この調査では、健康な男女200名の被験者を対象に、就寝30分前に20gの各種チーズを一週間にわたって摂取させ、記録された夢の内容と睡眠パターンを追跡・分析しました。
その結果、悪夢を見るチーズの真相として浮き彫りになったのは、チーズの種類によって現れる夢の傾向が劇的に異なるという事実です。なかでも突出した反応を示したのが、青カビ熟成の代表格であるスティルトンチーズでした。男性被験者の75%、女性被験者の実に85%が「奇妙で鮮烈な夢(Vivid and Bizarre Dreams)」を見たと証言したのです。
報告された夢の内容には、「喋る軍用車両」「ベジタリアンの巨大猫」「透視能力を手に入れた同僚」など、不条理かつシュールレアリスム的な情景が目立ちました。純粋な恐怖に怯える悪夢というよりは、脳が過剰に覚醒した状態で生み出す「超現実的なヴィジョン」が多発した点が、この調査における最大の発見でした。