本作には、連載初期から「ユミル」という名にまつわる緻密な伏線が張り巡らされていました。読み返すことでその恐るべき構成力に気づかされます。
代表的なものが、単行本5巻に収録された特別編「イルゼの手帳」です。調査兵イルゼ・ラングナーに遭遇した無垢の巨人が、彼女の姿を見て「ユミル様……よくぞ……」と跪き、言葉を発しました。当時は謎とされたこの描写は、この巨人がかつてマーレで104期生ユミルを「神」として崇めていた信徒の成れの果てだったという形で、見事に回収されました。
また、104期生ユミルが「ニシン」の缶詰を読めたシーンも有名です。パラディ島の古代文字とは異なるマーレの言語を読めた彼女の描写は、壁の外に高度な人類文明が存在することを示す最初期の極めて重要な手がかりでした。
エレンと104期生ユミル、そして始祖ユミルの3者は、いずれも「不自由な檻」から抜け出そうともがき続けた存在でした。104期生ユミルが命を賭してヒストリアに遺した「胸を張って生きろ」というメッセージは、奇しくも物語全体の根底に流れる「生まれてきただけで偉い」という生存の肯定と深く共鳴しています。