「普段は魚介類に一切手をつけない我が子が、しらすを混ぜたご飯だけはおかわりを要求する」――育児の現場で頻繁に耳にするこの現象は、偶然ではありません。小児の味覚生理学を検証すると、子供が魚を拒絶する主な要因は「小骨への恐怖」「酸化した魚油の生臭さ」「パサつきによる飲み込みにくさ」の3点に集約されます。
しらす(マイワシやカタクチイワシの稚魚)は、骨ごと食べられる極めて柔らかな組織構造を持ち、喉に刺さる物理的な危険がありません。さらに、青魚特有の血合い肉が発達する前の段階で水揚げ・釜茹でされるため、揮発性の魚臭物質(トリメチルアミンなど)の発生が極めて微量に抑えられています。舌触りもしっとりしており、唾液分泌が未発達な低年齢児でもスムーズに咀嚼・嚥下できる点が決定的な強みです。
また、味覚の観点からも子供の嗜好に合致します。人間が本能的に好む基本味は「甘味」と「うま味」ですが、しらすには核酸系うま味成分であるイノシン酸が凝縮されています。程よい塩分とうま味が咀嚼のたびに口内に広がるため、子供の未熟な味蕾(みらい)でもダイレクトにおいしさを感知できます。「魚嫌い子供しらす克服レシピ」としてメディアで取り上げられるメニューの多くは、このうま味を油脂や炭水化物で包み込み、子供の好む風味へ変換する設計が徹底されています。