なぜ「同じメニュー・同じカロリー」を口にしても、昼と深夜では身体への残り方が根本的に異なるのでしょうか。その分子生物学的メカニズムの主役が、体内の概日リズムを司る時計遺伝子タンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」です。
日本大学薬学部の研究をはじめとする時間栄養学の知見によれば、BMAL1には脂肪組織で脂肪酸やブドウ糖の取り込みを促進し、脂質合成酵素を活性化させる強力な働きがあります。生体内のBMAL1分泌量は一定ではなく、1日の中で劇的な波を描いています。
- 14時〜15時前後:分泌量が1日の中で最も少なく、最も脂肪に変わりにくい時間帯。
- 20時以降:血中濃度が急激に上昇を開始。
- 22時〜深夜2時:分泌量がピークに達し、昼間のおよそ20倍から50倍に跳ね上がる。
21時を過ぎてからの食事は、まさにBMAL1が猛威を振るう「脂肪蓄積のゴールデンタイム」に燃料を投下する行為に他なりません。インスリン感受性が日中よりも低下している夜間に炭水化物を摂取すると、血糖値の急上昇と長時間の高血糖状態を招き、すい臓から分泌されたインスリンが過剰なブドウ糖をグリコーゲンではなく中性脂肪へと強力に固定化してしまいます。
夜遅い食事太る理由は、個人の意志の弱さではなく、DNAレベルでプログラムされた生存本能と生体リズムの不一致に起因しています。21時までに胃内容物の初期消化を終えておくことは、BMAL1の脂肪蓄積トラップを巧みに回避する唯一無二の生体防衛策なのです。