新橋駅烏森口を出てニュー新橋ビルの脇を抜け、赤提灯が揺れる通りへ足を踏み入れると、どこからともなく漂う香ばしい醤油と炭火の香りに行き当たります。炉端武蔵 新橋店が連日満席を記録し、客足を途絶えさせない最大の要因は、五感すべてを刺激する「劇場型空間」にあります。
引き戸を開けると真っ先に目に飛び込んでくるのは、店内中央に鎮座する巨大なコの字型カウンターです。氷の上に美しくディスプレイされた巨大なしいたけ、アスパラガス、脂の乗ったホッケ、立派なホタテや海老の数々。客が指差しで注文すると、焼き手と呼ばれる熟練の職人が炭火の前に立ち、絶妙な火加減で素早く焼き上げます。そして仕上げに、船のオールのような長い木べら(櫂)に皿を乗せ、「へい、お待ち!」の掛け声とともに客の目の前へと差し出されるのです。
この一連のダイナミックな体験は、単なる食事の提供にとどまりません。中央の焼き場を舞台、カウンター席をアリーナ席に見立てた見事なエンターテインメントとして機能しています。デジタル化が進み、タブレット端末での無機質な注文が主流となった現代だからこそ、職人との生々しいやり取りや炭の爆ぜる音、立ち上る煙といった原初的な酒場の情緒が、訪れる人々に強烈なカタルシスと高揚感を与えているのです。