なぜ人々は、これほどまでにこの地に引き寄せられるのか。答えは極めてシンプルでありながら、現代の日本において奇跡に近い贅沢だからだ。視界を遮る電柱も電線も看板もない。新緑の茶畑の緑と、冠雪した富士の白、そして抜けるような青空。この3つの色彩が完璧なバランスで調和する場所は、富士山麓広しといえども極めて稀だ。
かつては地元住民や一部の風景写真家だけが知る秘密の撮影地だった。しかし、構図の美しさが海外のトラベルメディアやSNSで拡散されるや否や、状況は一変した。早朝3時、まだ星が輝く時間帯から大型三脚を抱えた人々が農道に並ぶ。アジア圏だけでなく欧米からの個人旅行者も急増しており、言葉の壁を越えて「無電柱のパノラマ」が人を呼び続けている。