臙脂色の由来歴史を遡ると、遠く古代中国の時代に辿り着きます。もともと中国の北方にあった「燕(えん)」の国で採れる紅草(ベニバナ)から作られた化粧用の顔料(口紅や頬紅)を「燕脂(えんじ)」と呼んだことが、この名前の始まりとされています。
日本へは飛鳥・奈良時代に伝来し、貴族たちの装束や絵の具として珍重されました。江戸時代以前は主にベニバナから抽出した色素を重ね染めして作られていましたが、大変な手間とコストがかかる高級色でした。その後、中南米原産のサボテンに寄生するカイガラムシから抽出されるコチニール色素(カルミン酸)が世界的に普及したことで、退色しにくい鮮烈で深みのある赤紫染料として定着し、近代の日本画や染織工芸においても「臙脂」の表現が大きく発展しました。