ネット上の誤った民間療法や個人の自己判断で散見されるのが、「早く治すために針で水ぶくれを潰して膿を出す」という危険な行為です。結論から言えば、口唇ヘルペスの水ぶくれを潰すことは、治癒を早めるどころか事態を著しく悪化させます。
水ぶくれを満たしている滲出液の中には、活動性を保った膨大な量のウイルスが密集しています。物理的に押し潰すことで周囲の健康な皮膚へウイルス液が広がり、病変部が唇全体や顎、鼻の下へ飛び火する自家接種を引き起こします。さらに、露出した創面から黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込んで二次感染を起こすと、化膿して色素沈着や深いクレーター状の痕を残す恐れがあります。
同時に警戒すべきは他者への伝播です。健常時において唇のヘルペスが他人にうつる確率は極めて低いものの、水疱期からびらん期にかけては感染力が桁違いに跳ね上がります。ウイルスが付着したタオルやコップの共用、パートナーとのスキンシップ、乳幼児へのキスは厳禁です。特に新生児や抗がん剤治療中の方、アトピー性皮膚炎を持つ方が感染すると、ヘルペス脳炎やカポジ水痘様発疹症といった重篤な全身疾患に発展するリスクがあるため、家庭内でも厳格な衛生管理が求められます。