だるまに目を描き入れる際、最も多い疑問が「左右どちらから墨を入れるべきか」という点です。結論から言うと、基本は「だるま自身の左目(向かって右側)」から描き入れます。自分から対面して見たときに右側にあたる目であり、ここを間違えて自分自身の左手側(向かって左)から入れてしまうケースが後を絶ちません。
なぜ左目から入れるのか。その背景には、古代中国から伝わる「陰陽五行思想」と日本の伝統的な席次礼法が深く関わっています。東洋の思想では、天子は南を向き、太陽が昇る東(左手側)を最上位とする「左上右下(さじょううげ)」の考え方があります。左は「陽」であり物事の始まりや生起を象徴し、右は「陰」であり結実や終わりを象徴するとされてきました。
また、禅宗の祖である達磨大師の座禅の境地になぞらえ、物事を起こす最初の起点として左目に魂を宿らせる儀礼が定着しました。さらに仏教の「阿吽(あうん)」の呼吸において、向かって右側の左目は口を開く「阿(物事の始まり)」に対応しているという解釈も広く知られています。こうした歴史的背景から、まずは向かって右の目に墨を入れ、心願成就のスタートを切るのが正統な手順とされています。