このスラングを正確に理解するためには、発祥の母体となった大型匿名掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」内の生き物苦手板の存在と、対概念である「白ムツ」との関係性に触れねばなりません。
もともと生き物苦手板は、動物アレルギーを持つ人や害獣被害に悩む人、動物恐怖症を抱える利用者が情報交換を行う避難所として設置されました。しかし、2000年代初頭から徐々にその性質が変質し、野良猫や小動物への憎悪を募らせたユーザーが寄り集まる隔離空間へと転落していきました。その閉鎖空間の中で形成されたのが、以下の二項対立です。
白ムツとの違いを一言で表現するならば、「対象への狂信的な保護」か「徹底的な破壊」かという極端なベクトルの差です。「白ムツ」とは、動物愛護精神を過剰に振りかざし、他者への攻撃や地域住民とのトラブルを厭わない過激な愛護派、いわゆるネット上の「愛誤(あいご)」を揶揄する蔑称でした。そして、これら愛護派の言動に激しい嫌悪感を抱き、反動として動物への加害を正当化・先鋭化させていった陣営が、自らを、あるいは敵対者から「黒ムツ」と呼ばれるようになった経緯があります。
黒ムツ5chの内部では、過激な言動を投稿することで板内での承認を得ようとする心理が働き、単なる愚痴や不満の吐露から、具体的な捕獲トラップの構造、毒餌の調合方法、さらには虐待行為の生々しい描写を競い合う異常なエコーチェンバー現象が発生していきました。