佐々木の凄絶な意志の背後には、彼の師であり万朶隊の指揮を執った原田操中隊長の教えが存在した。原田は出撃前、密かに部下たちを集めてこう言い渡していた。「特攻などという邪道な攻撃をする必要はない。爆弾を命中させて生きて戻れ。何度でも出撃して敵を叩け」と。
この指導は、死をもって功績とする当時の軍国主義的価値観に対する強烈な抗議であった。佐々木はこの恩師との固い約束を胸に刻み、どんなに参謀から喝破されようとも、上官命令の不条理を自らの生存によって突き返し続けた。
「命を無駄に捨てるな」という教えを守り抜くこと。それは軍の同調圧力に飲まれず、個人の尊厳を守り抜く命がけの戦いでもあったのだ。