彼女の作品づくりにおいて、音響表現が果たす役割は極めて大きい。風が葉を揺らす微かな音、古い廊下がきしむ振動、沈黙の合間に聞こえる息づかい。それらすべてが、精密な計算のもとで再構築されている。映画音楽の重鎮たちが「音の配置に関する洞察が異常なほど鋭い」と唸るほど、音空間の設計には徹底的なこだわりが貫かれている。
撮影現場を知るスタッフは異口同音に語る。照明の位置を数ミリ単位で調整し、マイクが拾う環境音のノイズ一つにも一切の妥協を許さない。徹底したディテールへの執着。しかし、出来上がった映像には一切の重苦しさがなく、透明感のある風が吹き抜けているような軽やかさがある。この「執念の結実としての軽やかさ」こそが、観客の無意識に深く刺さる要因なのだろう。