公益性の高いインフラ事業でありながら、なぜ世間では「土場屋は怪しい」「反社会的勢力が関わっている」と後ろ指を指されることが多いのでしょうか。この土場屋怪しい噂の真相を紐解くには、日本の法制度の隙間と、過去数十年におよぶ残土処理の闇の歴史を直視しなければなりません。
最大の要因は、建設現場から出る土砂が法的に「産業廃棄物」ではなく「資源(建設発生土)」として扱われてきた点にあります。廃棄物処理法の厳格な管理(マニフェスト制度や許可基準)の網から外れていたため、自治体ごとの残土条例に緩急があり、広大な山林や農地を安価に手に入れて看板を掲げれば、事実上誰でも「残土置き場」を名乗ることができました。
この法規制の空白地帯に目を付けたのが、暴利を貪る不法業者や反社会的勢力でした。かつて首都圏近郊の山間部や郊外では、フェンスで厳重に囲まれた敷地、いわゆる「ヤード」が無数に出現しました。そこでは、正規の処分費用を徴収しながら土砂を無許可で過剰に堆積させたり、夜間に産業廃棄物中間処理を通さないコンクリートガラや廃プラスチック、有害な建設汚泥を土砂に混入して埋め立てたりするヤード問題不法投棄が横行したのです。
山肌を削り、危険な急斜面に土砂を積み上げ、限界に達すると会社を計画倒産させて事業主が雲隠れする——こうした悪質な手口が繰り返された結果、「土場屋=実態の見えない不気味な組織」「ヤクザの資金源」という負のイメージが定着しました。長年ダンプ業界に身を置くベテラン運転手は、業界の過去を次のように述懐しています。
「2000年代初頭の郊外ヤードには、ダンプが入るたびに事務所の黒塗りの車から強面の男が出てきて、領収書も切らずに現金を手渡しで受け取る場所が確かに実在した。だが、今そんな真似をすれば一発で警察と行政に踏み込まれて一網打尽にされる。時代は完全に変わった」