フィギュアスケート史において今なお議論が交わされるのが、2010年バンクーバー冬季五輪における「23.06点差」の正体です。当時、日本国内では「浅田真央が女子史上初めて1大会で3度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させたにもかかわらず、なぜこれほどの差がついたのか」という疑問と怒りが渦巻きました。
当時の公式リザルトと採点基準(CoP:新採点システム)を冷徹に分析すると、勝敗を分けたのはジャンプ自体の難易度ではなく、「出来栄え点(GOE)」と「演技構成点(PCS)」の最大化戦略でした。キム・ヨナ陣営(ブライアン・オーサーコーチ体制)は、新ルールの特性を極限まで研究。助走スピードを殺さず跳ぶ高難度コンビネーション(3回転ルッツ+3回転トウループ)と、驚異的な飛距離・着氷の流れによって、ジャッジから満点に近いGOEを引き出す戦術を完成させていました。
浅田真央はハイリスクな大技に挑みながらも、終盤の細かなミスによってGOEを失点。対するキム・ヨナは一切の淀みなく全要素で加点を積み上げました。これは選手の才能の差というよりも、「新採点システムの加点ロジックを極限まで活用した戦略的勝利」であったことが、スコアシートの精査から明確に裏付けられています。