写真の真贋をめぐる議論に決定的な裏付けを与えたのが、尚古集成館が保管する薩摩藩関係文書と、国立国会図書館のデジタルアーカイブに眠る一次史料の突合だ。当時の薩摩藩士の日記類や写真館の出納記録を精査したところ、明治4年前後、特定の写真技師が西郷邸を訪れたことを示唆する記述が複数発掘された。
これまで見落とされていた地方史料や私文書のデジタル化が進んだことで、点の情報が一気に線として結びついた。歴史学・アーカイブ研究の進展が、物理的なガラス乾板の劣化状態やコロジオン湿板特有の化学反応痕を科学的に証明し、偽作や別人の可能性を次々と排除していったのである。