2002年、田口壮さんはFA権を行使してメジャーリーグに挑む。新天地となったセントルイス・カージナルスでは、日本での実績が一切通用しない厳しい現実にぶつかった。マイナーでの苦闘や定位置争いに直面する夫のすぐ傍らで、恵美子さんもまた見えない戦いを続けていた。
単身赴任ではなく同行を選んだ彼女は、言葉の壁を乗り越えるために必死で現地生活に適応。球団の「Wives Club(奥様会)」や地域奉仕活動にも参加し、地元ファンや球団関係者との信頼関係を築いた。当時、同じ大リーグで偉業を打ち立てていたイチローさんら日本人選手たちとの交流の場でも、彼女の明るく細やかな気配りが心のオアシスとなっていたという。夫婦で耐え忍んだ日々の実りは、チームが世界一に輝いた2006年ワールドシリーズで結実する。歓喜の紙吹雪が舞うグラウンドで見せた二人の笑顔は、MLBファンの記憶に深く刻まれている。