社会学者の上野千鶴子氏が提唱し、一時代を風靡した「おひとりさま」という概念は、結婚や家族という従来のフレームワークに縛られない自立した生き方を称揚するものだった。自分の意思で独身を選び、自由に人生を楽しむ姿は、多くの単身者に勇気を与えた。しかし、その言説が広がってから年月が経過した今、現場からは新たな問いが浮上している。
自立した「おひとりさま」として生き抜くためには、相応の経済的・精神的リソースが必要不可欠となる。しかし、すべての人が十分な資産や強いメンタルを保持できるわけではない。40代を迎えて体力の衰えやキャリアの頭打ち、親の介護リスクが現実味を帯びてきたとき、自由の謳歌だったはずの「個」の生き方は、出口のない孤立感へと暗転する危険を孕んでいるのだ。