談志の教育論が世に広く知れ渡るきっかけとなったのが、立川談春の自伝的エッセイ『赤めだか』である。師と弟子のヒリヒリするような愛憎、理不尽なまでの修行の日々が描かれた同作は、単なる芸談を超えて組織論や教育論としても社会的に大きな話題を呼んだ。
談志が弟子に求めたのは、単なる手ぬぐいと扇子を使った形通りの演出ではない。人間の業や愚かさを肯定する「業の肯定」という落語哲学だ。名作『芝浜』に代表されるように、酒に溺れる夫とそれを支える女房の心理描写を、談志は徹底した人間観察とリアリズムで再構築した。弟子たちはその思想を受け継ぎ、自らの声で時代に響く人間模様を描き出している。