読者が単行本を手に取る際、まず確認したいのが「具体的にどのエピソードが収められているのか」という点です。集英社ジャンプコミックス刊の『HUNTER×HUNTER』31巻には、No.321「怪獣」からNo.330「告白」までの計10話が収録されています。前巻である30巻のラストで描かれた蟻の王メルエムとコムギの最期という静謐な幕引きから一転、31巻の冒頭ではキメラアント討伐の公式発表と、アイザック=ネテロ会長の急逝に伴う後任選出の火蓋が切って落とされます。
31巻のあらすじを構造的に追うと、物語は明確な2つの太い軸で並行駆動しています。第1の軸は、ネテロが遺したビデオメッセージを起点とする会長選挙編の政治劇です。ネテロの遺志を継ごうとする協会の幹部会「十二支ん」と、協会の完全掌握を目論む副会長パリストン=ヒルとの間で、投票率や投票条件を巡る緻密なルールメイキングの攻防が展開します。
そして第2の軸が、瀕死の重症を負ったゴン復活の経緯を描くレスキュー劇です。ネフェルピトーを倒すために自らに課した誓約と制約の代償は凄惨を極め、除念師ですら匙を投げる異形のミイラと化したゴン。この絶望的な状況を唯一覆せる手段として、キルアが実家であるククルーマウンテンへと単身乗り込み、幽閉されていた実妹(弟)アルカを連れ出す決断を下します。国家規模の権力闘争と、極めて個人的な友への祈りが交錯する構成は、冨樫義博氏のストーリーテリングの真骨頂といえます。