「和室をおしゃれな洋室に変えたい」「フローリング感覚で使いたい」と、畳の上にビニール製マットやウレタンマットを敷き詰める行為は、畳職人や住宅設備関係者の視点から見れば極めて危険な選択です。全国の畳内装事業者への取材によると、敷物による畳の腐食トラブルの約8割が「敷きっぱなしによる湿気滞留」に起因しています。
天然のい草で作られた畳は「天然のエアコン」とも呼ばれ、畳1畳あたり約500ml(ペットボトル1本分)の水分を吸放湿する能力を備えています。空気が乾燥すれば湿気を吐き出し、湿気が多ければ吸い込むことで室内環境を保っているわけです。ところが、その表面を高気密なマットで塞いでしまうと、吸い込んだ湿気の逃げ場が完全に失われます。
室温20〜30℃、相対湿度65%を超えた密閉空間は、カビ菌にとって理想的な増殖環境です。さらに、発生したカビをエサにしてチリダニやツメダニが連鎖的に大繁殖します。半年から1年ほど放置した後に敷物をめくった際、い草が粉を吹いたように白や黒に変色し、悪臭を放つ状態になって初めて事態の深刻さに気づくケースが後を絶ちません。畳の上に敷くマットのカビ対策とダニ対策を講じるならば、まず「敷きっぱなし=密閉による自滅」という構造を認識する必要があります。