高知ランチを語るうえで避けて通れないのが、約60店舗がひしめく巨大屋台村「ひろめ市場」の存在です。食べログの口コミやSNSでも圧倒的な投稿数を誇り、豪快な藁焼きの実演で知られる「明神丸」や、塩タタキの元祖的な存在として熱狂的ファンを持つ「やいろ亭」など、名店がしのぎを削っています。しかし、現場のリアルな実態を検証すると、手放しの賛美だけでは語れない課題も浮き彫りになります。
最大の問題は「席の争奪戦」です。ひろめ市場は昼から酒を酌み交わす「おきゃく(土佐の方言で宴会の意)」文化の聖地でもあるため、回転率が極めて低い特徴があります。特に土日祝日の12時台は、フードコート形式の共有席が完全に埋まり、料理を買ったものの席が見つからず通路をさまよう観光客の姿が日常茶飯事となっています。現地調査でも、注文から着席までに40分以上を要したケースが珍しくありません。
落ち着いてカツオのタタキや海鮮丼を堪能したいのであれば、市場外の実店舗に目を向けるのが賢明な選択です。大橋通や追手筋周辺には、創業数十年を数える土佐料理の老舗や海鮮割烹が点在しており、同等以上のクオリティを持つ定食を、清潔なテーブル席やカウンターでストレスなく味わうことができます。また、宇佐や中土佐など港町に直結した海鮮丼人気店では、朝獲れのドロメ(イワシの稚魚)やネイリ(カンパチの幼魚)をふんだんに盛り込んだ丼が1,500円前後で供されており、市場の喧騒を離れて純粋に魚の旨味と対峙したい層から絶大な支持を得ています。