なぜ事実関係が不透明であるにもかかわらず、メディアはこれほど執拗に旧宮家の兄弟を報じ続けるのでしょうか。そこには、日本政治が長年先送りにしてきた「皇位継承問題」と「皇族数減少」の構造的デッドロックがあります。
政府の有識者会議が提示した皇族数確保の2大方針は次の通りです。
- 案1:内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する。
- 案2:皇統に属する男系男子を養子縁組等によって皇籍復帰させる。
ここで保守派論客や一部政治勢力が強く主張するのが、「案1と案2のハイブリッド」というシナリオです。すなわち、愛子内親王殿下が旧宮家の男系男子と結婚すれば、生まれてくる子は父系も母系も天皇の血を引く完璧な男系男子となり、皇位継承の正統性をめぐる議論が一気に氷解するという政治的計算です。
しかし、この筋書きには致命的な盲点があります。それは、当事者である若い男女の「個人の意思と尊厳」を完全に置き去りにしている点です。旧宮家の青年たちは、戦後の日本国憲法下で生まれ育った主権者たる国民です。職業選択の自由、居住移転の自由、そして何より日本国憲法第24条が保障する「婚姻の自由」を享受しています。国家の皇位継承策の駒として都合よく「復帰」や「結婚」を期待される筋合いはありません。
ネット上には「旧宮家男子なら喜んで皇室に入るはずだ」という安易な臆測も見られますが、かつての小室圭さん・眞子さんの結婚をめぐる苛烈なバッシング報道を目の当たりにした現代の若者が、自ら好んでその過酷なパブリックアイに飛び込むと考えるのは、あまりに世間知らずな幻想と言わざるを得ません。